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| 目の前にある中学受験というハードルも大いに気になるけれど、わが子が自分らしく幸福に生きていくために、小学生の今、どんな力をつけておくべきなのでしょうか。日々の暮らしを通して、将来に役立つ判断力や思考力を持った『頭のいい子』に育てるためには、どんなふうに保護者が関わっていけばいいのでしょうか。変わりゆく時代にも柔軟に対応できる本物のチカラを育てるためのヒントを教育学者、教育ジャーナリスト、そして私立中高一貫校の先生という教育の専門家と一緒に考えます。 | |

教育学者として幅広い年代の子どもたちの成長を見守り、奮闘する保護者に向けてわかりやすい言葉で子育てのヒントを提案してくれる汐見稔幸先生。
これまでに執筆した著作も数多く、手に取ったことがあるという方も多いのではないでしょうか。今回は『頭のいい子』を育てるために、保護者はどのように子どもと関わっていくべきかについてうかがいました。
-- まずおうかがいしたいのは、先生が『頭のいい子』とは、どのような力を持った子どもであるとお考えになるかという点です。
「僕自身はあまり『頭のいい子』という表現は使わず、『賢い子』という言い方をしているのですが、時代によって賢さの中身は微妙に違うと思います。賢いというのは自分を大切にできるということでもあるし、自分一人が幸せになるだけではなくて、周りも幸せでなければ本当に幸せとはいえない、ということがわかっていることだと思います。現代は、こうしたら賢くなれる、幸せになれるという功利的側面だけを追求する動きもあり、実際にはそのことによって不幸になってしまうという皮肉に充ち満ちています。だからこそ、自分や家族だけでなく、属している社会全体や世界全体の幸せを考えていけるような知性をちゃんと持った人間になっていってほしいと思います」
-- 時代によって賢さの中身が変わるということですが、現代を生きる若者や子どもに必要な賢さとは?
「実は今、『賢さ』という概念が大きく変わりつつあります。それは特に若者に顕著に出てきていて、あ、こいつは将来が楽しみだな』と感じる人物はいわゆる学力、偏差値がすごく高い人間では必ずしもない。そういうことがはっきりとしてきた時代なのです。実際、日本以上の競争社会であるアメリカで、東海岸のエリート大学を卒業した人間のその後を調べたところ、けっして社会的に成功する確率が高いとは言えないという結果が出たそうです。その逆に、社会で活躍している人たちの学校の成績を調べたところ、特に優秀なわけではなかったという調査もあるそうです。
知能指数、いわゆるIQで測られる論理数学的な知能とは、つじつまを合わせるとか、しっかり記憶するという分野に優れていることを表しますが、こうした能力は工業製品をきっちり作るとか、なるべく速くたくさん作るということが要求された20世紀型の社会には適していました。しかし情報を上手に提供するとか、質の良いサービスを提供するということが求められる21世紀型の社会においては、対人関係の柔軟性や発想力の豊かさが求められます。言ってみれば、『ポスト産業社会型の知性』が要求されている時代なのです。
これまでは、点数をつけやすく、正解がはっきりわかっているような問題を制限時間内に人よりたくさん解ける要領の良い人間が『賢い』とされてきました。でもそういうことがあまり得意ではないけれど、少し失敗して落ち込んでも、そこから上手に抜け出ることができるとか、相手のやる気をうまく引き出せる、やるべきことに優先順位をつけて自分をコントロールすることができる、といった能力に長けている人が現代社会で活躍している人に多いことがわかってきました。そこで、自分や人の情動を上手くコントロールできる能力については、IQに対する概念としてEQと呼ぼうという考えがアメリカから広まってきました。この能力に優れているということは、
社会性が高いと言い換えることもできると思います」






