eSampoおすすめ度
:悲しみの中に描かれる“希望”が優しく心に響く     |
食卓は家族の“幸せ度”を測るバロメーター
崩壊した家族が皮肉にも、ある悲劇によって再生していく姿を描き出し、観た後は優しい感動に包まれます。ヒロインの中学生・中原
佐和子役に、時折見せる可愛らしい笑顔が印象的な新 人・北乃 きい。家庭や学校での人間関係や恋愛の狭間で揺れ動く少女を初々しく演じています。
「お互いが何か“言いたいこと”を抱えた時は、必ず4人が顔を揃える毎朝の食卓の場で伝え合う」という中原家のルール。“言いたいこと”が楽しい内容ならまだしも、爽やかな1日の始まりに重い話題を口にしなければならないなんて、考えただけで胃が痛くなりそうです(笑)。そして、3年前に起きた父・祐一(羽場
裕一)の“心の崩壊”を機に、家族の歯車は少しずつ狂い始めます。そんな中原家を救ったのは、佐和子の恋人・大浦 勉学(勝地
涼)と、佐 和子の兄、直(平岡 祐太)の恋人・小林 ヨシコ(さくら)という2人の“他人”です。身近すぎて見えなくなってしまった時こそ、第三者の存在というのが必要になるのかも知れません。悲しみに暮れる佐和子に、ヨシコが「(家族に)安心して甘えたらいいと思う」と言うシーンがありますが、これぞ他人ならではの的確なアドバイスだと思いました。
食卓を囲むシーンが多いので、様々な食べ物がスクリーンに登場します。手作りシュークリームがとびきり美味しそうで、観た後は洋菓子店へ直行したくなりました(笑)。でも、特に気になったメニューは、父・祐一(羽場
裕一)が父を 辞めると宣言し、“一度やってみたかった”と言ってかき込む、みそ汁をかけた御飯。そして、“普段は皆のことを考えて料理を作らなきゃいけなかったから”と言う、1人暮らしの母・由里子(石田
ゆりこ)が挑戦した新メニュー、白ネギと醤油の生クリーム蕎麦(!)。これらの食事には、今まで“父”“母”という役割を担ってきた2人が、家族に気兼ねなく自由を満喫する姿が反映されています。でも、その愉しみにはどこか孤独がつきまといます。そして、一家全員で食卓を囲むのは手を取り合って生きる証であり、本当の幸せだということに気付いていくのです。
悲しみをバネに希望を持って生きていこうとする佐和子を映し出すラストシーンは、Mr.Childrenが本作のためにリアレンジした『くるみ -for
the Film- 幸福な食卓』の楽曲に載せて清々しい仕上がり を見せています。色々と上手くいかないことがあっても、やはり家族の温もりは大切だと痛感させられる作品です。
「幸福な食卓」
監督/小松隆志
出演/北乃きい、勝地涼、平岡祐太、さくら、羽場裕一、石田ゆり子
配給/松竹 |