健康アドバイス

骨の健康・骨粗しょう症

骨粗しょう症について

女性は男性に比べてカルシウムを多く消費するため、骨が弱くなりがちです。ひどいと、腰痛を引き起こしたり寝たきりになってしまうことも! 強い骨格をつくるための対策を考えていきましょう。

骨粗しょう症
骨粗しょう症

骨は、生きています。骨の中では、骨芽細胞によって新しく骨をつくる骨形成と破骨細胞による古い骨を溶かし吸収する(骨吸収)という活発な代謝が繰り返し営まれています。活発な代謝とは新しく骨をつくる骨形成と古い骨の吸収というこの営みは、副甲状腺ホルモン、女性ホルモン、活性ビタミンDなどにより、適切に調節されています。また、骨髄では、血液が絶え間なく生産されていますし、血中カルシウムの維持にも骨は大きくかかわっています。さらに直立して生活する人間では、200余りの骨が骨格を構成し、頭蓋、脊柱、四肢の骨が巧妙なバランスをとっています。

では、年齢とともに骨はどのように変化していくのでしょう? 右の図からもわかるように、生まれてから20歳までの成長過程は、骨の形成期です。この時期にしっかりした骨格をつくることが、それ以後の人生にとって大変重要です。というのも、骨量は30歳代でプラトーに達した後は、加齢とともに次第に減少していくからです。

【女性はとくに注意!】

女性にとって、骨の問題は男性よりはるかに大きな意味を持っています。生理、妊娠、授乳のたびにカルシウムが消費されます。幸いにして女性ホルモンが、骨量の維持に働いていますが、閉経期以後はこの保護作用がなくなります。図を見れば、50歳の閉経期から骨量が急な坂道をくだるように減少するのがわかります。
骨も年齢とともに歳をとっていくのです。若いときに、強い骨格をつくっておく必要があります。ダイエットでやせることばかりを望んでいると、後年大きなつけがまわってきます。

骨粗しょう症

骨の形成と吸収のバランスがくずれて、骨量の減り方が異常に大きくなり、骨がうすく内部構造もスカスカとなって骨折を起こしやすくなる病気、それが骨粗しょう症です。

骨粗しょう症にかかると、多くは症状がありませんが、まず身長が低くなります。そのうち姿勢が前屈みになり強い腰背痛に苦しみます

骨粗しょう症


比較的若い年齢でみられるのが、転んで前に手をついた際に起こる前腕骨折で、手首に近いところに起こります。


最も頻度が多いのは、背骨の圧迫骨折です。脊柱の24ある椎体のうち、胸下部から腰部の椎体に起こり、強い腰背痛を訴えます。


大腿骨頸部骨折は、高齢者の寝たきりという状態が大きな原因の疾患として知られています。骨粗しょう症の高齢者では、たとえばベッドから降りた際などの些細な動作でも簡単に骨折を起こすのです。

骨粗しょう症には続発性と原発性があります。続発性とは、内分泌性疾患、栄養障害、薬剤の影響(とくにステロイド)などによるもので、原因を除き治療することにより改善します。一方、大部分の骨粗しょう症は原発性で、やせた女性に多いのが特徴です。

骨粗しょう症

1. 50歳(閉経期)以後の女性
2. 70歳以上の高齢者
3. やせている人(BMI値 :18.5未満)
4. 歩いたり、運動することが嫌いな人
5. カルシウム摂取の少ない人
6. 胃切除などの消化管の手術を受けたか、慢性下痢のある人
7. 卵巣をとったり、早く閉経した女性
8. 喫煙習慣のある人
9. アルコールを飲み過ぎる人
10. 家族に骨粗しょう症患者がいる人

もし上記に当てはまるとしても、骨粗しょう症を予防することは可能です。まず、自分の骨密度を知る必要があります。骨密度測定は多くの人間ドックや保健所で測定を受けることができます。そして、骨密度が低い場合はいうまでもなく、それが正常であっても、中高年の女性は平素から骨粗しょう症の予防につとめてください。次に具体的な予防方法をご紹介していきましょう。

骨粗しょう症

食事と運動が予防の二本柱です。日常生活の中で簡単に取り入れられる食習慣の改善と運動のすすめの予防方法をご紹介します。ぜひ実践してみてください。

骨粗しょう症

1.カルシウムの摂取
離乳食成人では1日600mgが厚生労働省が決めた必要摂取量です。しかし、一般には、まだこの域に達していないといわれます。妊婦や授乳婦では1000mg以上が必要です。カルシウムの含量が多く吸収のよいものは、牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品です。また、小魚、ひじき、小松菜、青海苔、干しえびなどもよいでしょう。

2.良質なたんぱく質の摂取
豆腐 骨粗しょう症たんぱく質は、カルシウムとともに骨をつくっている主要な材料です。コラーゲンというたんぱく質の上にリン酸カルシウムがくっつき、骨がつくられます。そのためにも肉、魚、卵、牛乳、大豆製品など良質のたんぱく質を適度に摂るように心がけましょう。

3.ビタミンDの摂取
ビタミンDは、日光(紫外線)により活性化され、骨粗しょう症の改善に作用します。ビタミンDは、牛・豚・鶏肉のレバー、魚、卵、しいたけなどに含まれます。

4.ビタミンKの摂取
ビタミンKは、骨吸収を抑え、骨形成を促進する作用があるといわれます。ビタミンKの摂取には納豆がよく、納豆を習慣的に食べる人は、骨粗しょう症が少ないのです。

5.避けた方がよいもの
喫煙習慣のある人は、禁煙が必要です。適度の飲酒は結構ですが、毎日3合以上は飲み過ぎです。カフェインの多量摂取もよくありません。コーヒーは度が過ぎないように注意しましょう。

骨粗しょう症

1.1日最低30分歩く
できれば大股で1日30分は歩く習慣をつけてください。30分とは、午前、午後の総和でよいのです。

2.骨には適度な負荷が必要
骨を強くするためには、負荷のある運動が効果的です。人間は立っているだけでも、骨に重力の負荷がかかり、骨にカルシウムがくっつきます。適度に重い荷物を持って歩く習慣をつけましょう。買い物などが利用できます。

3.日常生活でこまめに動く
和式の生活をしている人は、骨折が少ないといわれます。布団の上げ下ろし、しゃがむ、立つなどの動作が足腰をきたえるからです。とにかく腹部、腰部、下肢の筋肉を強くすることが大切です。安静にして長く横になることは、筋肉の衰えとともに、骨からカルシウムが抜けて、骨粗しょう症の原因となります。

健康事業総合財団[東京顕微鏡院] 学術顧問、東京都老人医療センター名誉院長 小澤利男)